健全な社会と人を支える

安全安心な
水循環系の実現

プロジェクト

健全な社会と人を支える安全安心な水循環系の実現

水は日常生活には欠かせない資源で、人や社会の活動と水環境の間で循環しています。しかし水に関わる化学物質や病原細菌・ウイルス・薬剤耐性などの健康リスクの発生源や全体像は明確ではない状態にあり、現状の水インフラ システムでは、水利用での健康リスクをゼロにすることができない状況です。
本研究課題は、人や社会と環境の間で循環する水を総合的に捉え、日常的に利用・飲食する水の安全、人や社会の活動に伴い水環境へ排出される水の安全を確保し、子供から高齢者までの誰もが、無意識に水に関わる様々な健康リスクから守られる社会を目指します。循環する「水」の安全レベルを科学技術により更に高次へと引き上げ、私たちを脅かす健康リスクの低減・制御に取り組む挑戦的課題であります。
このような背景や目指す社会像に基づいて本研究課題では、健康リスクの発生源である重要管理点の明確化と迅速かつ高精度な健康リスクの検出技術の開発によるリスク管理・評価(POC1) 、革新的な水処理技術を組み合わせた上下水の処理によるリスクコントロール(POC2)という2つのPOCを設定しています。

POC1:重要管理点の明確化と人健康リスクの実態解明

① 水循環系における重要管理点の明確化とリスク実態の解明

水循環系のなかの健康リスクの発生源と拡散経路を把握し、高負荷で影響の深刻な発生源を「重要管理点」として明確化する。探索研究における成果から、重要管理点として、水供給では浄水施設、水排出では下水処理施設、病院施設、畜産施設を候補とし、健康リスク実態を明らかにする。

② 下水疫学の社会実装による感染症リスクへレジリエントな社会の構築

高感度検知情報からモデル地域における感染流行を早期に把握し、将来のPOCの引き取り手である社会が有効に活用できるシステムを開発する。このシステムは将来起こり得る次なるウイルス感染症パンデミックの際にも有効に機能できる。新型コロナウイルスの変異株やインフルエンザウイルスなど他の感染症も含めて、下水メタゲノム解析による未知ウイルスの早期同定技術も開発する。

POC2:健康リスクを許容可能なレベルに制御する手法の開発

重要管理点における高規格水処理システムの導入等によるコントロールにより、水利用が重要な流域にある水循環系に内在する健康リスクを水利用段階で許容可能なレベルにコントロールが可能であり、かつ全国の様々な水環境への適用普遍性があることを実証する。また、各重要管理点において求められるリスクコントロールの考え方や方法を方式化する。それらに基づき導入する新規の検出技術と水処理技術を開発し、健康リスクを許容可能なレベルにコントロールでき、それに要するコストが見合うことを示す。実装時には、既存技術に比してコスト等の経済性が上回ること、あるいは、新しく技術導入するコストでインパクトある新たな公衆衛生改善の便益があることを示す。